[レポート]データ活用推進の取り組みとポイント #Looker #BEACONJapan
この記事は、2021年6月22~23日開催の Looker BEACON 2021: Japan のオンラインセッション『データ活用推進の取り組みとポイント』に関するセッションレポートです。
セッション概要
登壇者:
・山崎 彩世 氏 - 株式会社スペースマーケット プロダクトマネジメント部 データアナリスト
発表内容:
データ利活用を推進するためには、現状の課題を整理し、最適なソリューションを選択し、適切に実行していくことが大切です。限られたリソースの中でどのように課題にアプローチし、どのような変化が起こったかを事例と合わせてご紹介します。
会社・サービス紹介
- あらゆるスペースを手軽に貸し借りできる「SPACEMARKET」のサービスを運営している。
Looker導入前の状況と課題
導入前の組織の状況
- 組織
- 65~70名(開発メンバーが約半数)
- データアナリスト1名(登壇者の山崎さんのみ)
- データ環境
- Redashを使用していた
- SQLの社内勉強会も開催し、データ活用文化を醸成
課題
- 組織が大きくなるにつれて、課題が顕著に。
- 課題1:データの信頼性が担保できない
- 仕様書やER図などのドキュメントが存在しない・メンテナンスされていない
- 社内でSQLスキルの差があり、RedashのQuery Snippetsを使用しても、クエリの品質の担保が難しかった
- データ定義の整備不足。例えば、「売上」は税込・税抜どちらなのか、など
- 課題2:データマネジメントに対するリソース不足
- 内製したBIダッシュボードのメンテナンスに着手できる時間がない
- データ定義や運用ルールなどの整備をする時間がない
LookerのPoC~導入決定
PoC詳細
- 検証内容
- 既存の内製BIツールと同様の機能を再現できるか?
- 例:複雑な金額計算ロジックをLookerで実現できるか?
- ビジネスユーザーが活用できるツールであるか?
- 既存の内製BIツールと同様の機能を再現できるか?
- 検証期間
- 計4週間
- 開発:約3週間
- ユーザビリティテスト:約1週間
- 計4週間
- 採用理由
- 運用的観点
- LookMLでのデータの定義を一元管理するため、売上の税抜・税込みなど、ユーザー間での定義のズレを防止できること
- ビジネスユーザーがSQLを記述することなく、データを利用することが出来ること
- Lookerで抽出・可視化したデータを既存のワークフローやアプリへ組み込んで活用可能であること
- 技術的観点
- Looker自体がデータを持たないアーキテクチャであること
- LookerはSaaSで提供されているため、ITシステムとしての運用負荷が最小限であること
- Gitによるバージョン管理が可能で、データモデルの開発を効率よく実現できること
- 運用的観点
Looker 導入前後のETLアーキテクチャの変遷
Before
After
Looker導入後の活動
- オンボーディング
- Looker社のJump Startプログラム
- セッションの内、半分をビジネスユーザー向けの内容で実施
- 社内勉強会
- 社内の問合せ窓口の設立(Slackの専用チャンネル、Remote hour)
- Looker社のJump Startプログラム
- 開発
- PoC期間にスピード重視で開発したLookMLのリファクタリング
- Refinementsも使用
- RedashからLookerへの移行
- 元々、Redashで1000前後のクエリを登録していた
- ビジネスユーザーにLookerの使い方をより深く理解してもらい、山崎さん自身も「どのようなExploreが必要なのか」を考える良い機会となった。
- Lookerによるデータ活用では、Explore設計が肝!
- PoC期間にスピード重視で開発したLookMLのリファクタリング
- 導入後の変化
- ユーザーからの声
- これまで、出力するデータが正しいかどうか確認しながらSQLを書いていたが、この負荷がなくなった
- 詳細なデータのドリルダウンが可能になり、スピーディに業務を行えるようになった
- 会議中にLookerでデータを取り出しながら話を進めることができるようになった
- ユーザーからの声
事例紹介
- 「直前割」機能の改善施策
- 直前割とは
- ホストが、スペース利用日より5日~0日前までの予約に対して割引設定出来る機能。利用直前の予約促進のための機能。
- コロナ等の影響もあり、レンタルスペースは日常的に利用されることが増加。そのため、「直前割」の提供価値が失われていることを懸念に感じた。
- 何を改善したか?
- 適用期間を、「5日~0日前」から「3日~0日前」に変更
- 想定された予約率減少リスクも特に発生せず、むしろホストの単価上昇による収益性改善に貢献できた
- Lookerをどう活用したか?
- 機能変更前後の予約率や予約数をモニタリングする、専用ダッシュボードを作成。閾値を定めてアラートを設定し、すぐにSlackに通知が届くように。
- 直前割とは
- 各部門における様々な活用事例
- マーケティングチーム
- Google AnalyticsやGoogle Search Consoleのデータを連携し、ダッシュボードでKPIを一元管理
- エンジニアチーム
- Githubのデータを連携し、commit数などを集計・可視化することでチームの生産性をモニタリング
- カスタマーサクセスチーム
- ホスト審査や予約の状況把握に活用したり、ホスト運営のフォローアップのためのデータをLookerから抽出(システムの連携イメージは下図)
- マーケティングチーム
まとめ
- Lookerを導入した効果
- 「データガバナンス問題」と「リソース不足」という2つの課題を解決できた
- 様々な部門のビジネスユーザーが、Lookerを活用して成果創出や業務効率化を実現できている
- 今後
- Zendesk、Jiraなど様々なサードパーティツールと連携させて、Looker上で一元管理し、より効率的に業務オペレーションを改善できるようにしていきたい
- 引き続きLookerを「データプラットフォーム」として磨き、事業成長のエンジンとして寄与していきたい
視聴後の所感
まず端的に述べると、「Lookerを導入したことで全社のデータ活用促進・業務効率改善につながっている好事例」という印象を受けました!
「Lookerをフルに活用するにはどうすればよいか?」を考えて運用されているため、ビジネスユーザーへの展開を重要視することで全社のデータ活用を促したり、他のサードパーティツールと併せた業務効率を改善したり、具体的で他社様でも参考になる内容が多い事例だと感じました。
スペースマーケット様も該当しますが、Lookerは元々Redashなど別のBIツールをすでに運用していて、「社内のデータガバナンスが取れず、安心してデータを使用できない」「データエンジニア・アナリストのリソース不足でデータ整備ができていない」という課題をお持ちの方には、とても刺さるツールだと私も感じています。
「既にBIツールを導入しているけど、データが統制できてないな…」など課題を感じている方は、Lookerの導入を検討してみてはいかがでしょうか!